聖母マリアの七つの悲しみの道行
「7つの悲しみの道行き」の、はじめの祈り
★救い主の母、聖母マリアよ…あなたの一生は悲しみの生涯でした。あなたは天使のお告げに対する「この身に成りますように」と言う言葉によって、神の独り子の母になる事を引き受けられました。この言葉によって、あなたはキリストの母としてだけではなく、人類の母となる為に苦い大海原に船出する事になりました。
✝聖母マリアよ、あなたがこれ程まで苦しまれたのは、御子の救いの業に協力するように神が望まれたからです。
✞愛の泉であるマリアよ…私に対する、あなたのいつくしみの深さを悟らせ、主イエスとあなたの苦しみを私の心にしるし、痛悔の涙を流されて下さい。アーメン。
第1留「聖母は老シメオンの預言によって悲しむ」
★ああ、聖母よ、
✞御子の御傷を私の心にしるし、その御血で私を強めて下さい。
★聖母はモーセの律法に定められた清めの期間が過ぎたので、幼子イエスを神殿に献げる為、エルサレムに上った。老シメオンは、聖霊に導かれて神殿の境内に入って来た時、幼子を御母から受けて両腕に抱き、御母に向かって、「この子は逆らいを受けるしるしに立てられた。あなたの魂も剣で刺し貫かれるだろう」と言った。「イサクを献げなさい」との神の命令を受け、その子を連れて3日間の旅を続けた時のアブラハムの心痛は、耐え難いものが有っただろう。しかし、マリアは老シメオンの預言を耳にしてから33年間、アブラハムの悲しみに遥かに勝る悲しみを耐え忍ばれた。
沈黙
✞聖母マリアよ、私は数限りない罪をもって、無数の剣を御胸に突き立ててしまった事を悔やみ、赦しを乞い願います。あなたが耐え忍ばれた苦しみによって、私の罪を悔い改める事ができますように。
聖母マリアへの祈り1回
栄唱1回
★ああ、聖母よ…あなたの魂は剣で刺し貫かれました。
✞私にも、あなたの悲しみを感じさせ、ともに涙を流されて下さい。
第2留「聖母はエジプトへ逃避する」
★ああ、聖母よ…
✞御子の御傷を私の心にしるし、その御血で私を強めて下さい。
★ヘロデ王は、救い主の誕生を聞き、王位を奪われる事を恐れ、ベツレヘムとその付近の2歳以下の男の子を皆殺しにした。その時、天使がヨセフの夢の中に現れ「起きて、幼子とその母を連れて、エジプトに逃げなさい」と告げた。ヨセフはすぐに2人を伴い、暗闇に紛れてベツレヘムを発ち、難を逃れた。若い母マリアは幼子を抱き、人影のまばらな砂漠で、飢えと渇きに苦しみながら旅路を急いだ。エジプトに着いてからは、身寄りも蓄えもなく、生き延びる事で精一杯の日々だった。
沈黙
✞聖母マリアよ、私は罪を重ねて、日夜、御子を苦しめ、あなたの御心を痛めてしまった事を悲しみます。あなたがエジプトをさすらって忍ばれた困難によって、私にもこの世の旅路をつつがなく辿り、いつの日か永遠の国において、あなたと共に、御子をひたすらに愛する事ができますように。アーメン。
聖母マリアへの祈り1回
栄唱1回
★ああ、聖母よ…
あなたの魂は剣で刺し貫かれました。
✞私にも、あなたの苦しみを感じさせ、ともに涙を流されて下さい。
第3留「聖母は御子を見失う」
★ああ、聖母よ…
✞御子の御傷を私の心にしるし、その御血で私を強めて下さい。
★マリアとヨセフは、イエスが12歳になった時、慣習に従って過ぎ越しの祭に与る為、エルサレムの都に上った。祭りが終わって帰路に着いた時、イエスを見失い、不安の中にイエスを捜しまわり、3日目にようやく神殿の境内で見い出した。御子に「子よ、なぜこんな事をしたのですか？」と問いただされたのを見ても、御母の心痛が伺われる。「泣いて夜を過ごし、涙は頬をつたう」と言うエレミアの預言は、ここに成就した。
沈黙
✞聖母マリアよ…何一つ罪を犯す事の無かったあなたが、なぜ、御子を見失い、悲しみ憂いながら尋ね歩かねばならなかったのでしょうか。数々の罪をもってイエスを見失った私こそ、一心に探し求めなければならなかったはずです。どうか、あなたが味わわれた心痛によって、この後、罪を犯して御子を見失う事がないよう、私をお導き下さい。アーメン。
聖母マリアへの祈り1回
栄唱1回
★ああ、聖母よ…
あなたの魂は剣で刺し貫かれました。
✞私にも、あなたの苦しみを感じさせ、共に涙を流させて下さい。
第4留「聖母はカルワリオへの途上で御子と出会う」
★ああ、聖母よ…
✞御子の御傷を私の心にしるし、その御血で私を強めて下さい。
★聖母は、御子が死刑の宣告を受けた事をヨハネから聞き、刑場に行く道の途中で御子を待っていた。死刑執行の先触れのラッパの音は聖母の耳に響き、刑具を運ぶ刑吏らは騒がしく目の前を過ぎていく。その後から、十字架を担ってよろめきつつ進んでくる囚人は誰かと思えば、茨の冠を被せられ、全身傷つき、血にまみれ、唾で汚れたイエスだった。この囚人が最愛の我が子であるとわかった時の聖母の御心は、どのようなものだったろう。御子イエスも痛ましい眼差しで、悲しみにくれる御母を眺める。このお二人の互いの出会いこそは、2つの御心を刺し貫いた鋭い剣であった。
沈黙
✞聖母マリアよ…涙ながらに御子の後を辿る、あなたのお姿を思い浮かべると、こみ上げる涙を抑える事ができません。どうか、あなたの悲しみによって、私に与えられる十字架を勇気をもって担い、御子の後に従う事ができますように。アーメン。
聖母マリアへの祈り1回
栄唱1回
★ああ、聖母よ…
あなたの魂は剣で刺し貫かれました。
✞私にも、あなたの悲しみを感じさせ、ともに涙を流させて下さい。
第5留「聖母は十字架のもとに佇む」
★ああ、聖母よ…
✞御子の御傷を私の心にしるし、御血で私を強めて下さい。
★主イエスはあえぎながら、ようやくカルワリオの丘の頂上に辿り着いた。刑吏は荒々しく主の衣を剥ぎ取り、主を十字架に押しあて、釘で手足を打ち付け、十字架を立てた。罪状書きは「ユダヤ人の王」。
聖母は十字架のもとに佇み、御子の臨終の様子を仰ぎ見た。聖母は我が子が「渇く」と叫んでも、一滴の水すら飲ませる事ができなかった。「私の神よ、なぜ私を見捨てられたのですか」と御子は叫び、ついに大声をあげて息絶えた。御子の臨終の様子をご覧になり、聖母は無数の剣を一度に突き立てられる心地がして悶えられた。
沈黙
✞聖母マリアよ…あなたを一心に愛し、あなたも一心に愛した御子は死去されました。聖母よ…私にも、あなたの傍らに立って、ともに嘆かせて下さい。御子の死去と、あなたの悲しみによって、私に罪の赦しと終わりのない命とを得させて下さい。アーメン。
聖母マリアへの祈り1回
栄唱1回
★ああ、聖母よ…
あなたの魂は剣で刺し貫かれました。
✞私にも、あなたの悲しみを感じさせ、ともに涙を流させて下さい。
第6留「聖母は御子の亡骸を抱く」
★ああ、聖母よ…
✞御子の御傷を私の心にしるし、その御血で私を強めて下さい。
★一兵士が、槍でイエスの脇腹を突き刺したので、傷口から血と水とが流れ出た。主はその最後の一滴までも、全人類の為に流し尽くされた。
主の御体を槍が傷つけた時、聖母も共に苦痛を感じられた。
主の亡骸は十字架から降ろされ、御母は膝の上で抱かれた。御子の頭は茨の棘で傷つけられ、苦しみに歪んだ口は開かれ、目は窪み光なく、手足は釘で打ち貫かれている。聖母マリアはこの痛ましい姿の上に何度も顔を伏せられ、御子の苦しみが胸に迫り、消え入るばかりに嘆き悲しまれた。
沈黙
✞聖母マリアよ…あなたを嘆き悲しませたのは、私です。ああ、罪人である私は、今更ながらに悔やみ悲しみます。どうか、私にあなたの痛みを深く悟らせ、感じさせ、御心を慰める為に、力を尽くさせて下さい。アーメン。
聖母マリアへの祈り1回
栄唱1回
★ああ、聖母よ…
あなたの魂は剣で刺し貫かれました。
✞私にもあなたの悲しみを感じさせ、共に涙を流させて下さい。
第7留「御子が墓に葬られる」
★ああ、聖母よ…
✞御子の御傷を私の心にしるし、御血で私を強めて下さい。
★聖母は刑場に臨み、御子が息絶えるまで耐え忍ばれ、その冷たい亡骸を両腕に抱かれた。今や遂に墓に葬る為、最愛の我が子に最後の別れを告げる時が来た。
主の弟子たちは、聖母から亡骸を乞い受けて、没薬を塗り、用意した布で包み、墓へと運んだ。聖母は敬虔な二、三人の婦人たちに伴われて、墓まで行き、溢れる涙を抑えつつ、最後の別れを惜しまれた。
沈黙
✞聖母マリアよ…泣き悲しまなければならないのは、あなたではなく、罪を重ねた私です。私は今から、あなたの悲しみの元となった私の罪を償い、命ある限り清らかに過ごしたいと決心いたします。アーメン。
聖母マリアへの祈り1回
栄唱1回
★ああ、聖母よ…
あなたの魂は剣で刺し貫かれました。
✞私にも、あなたの悲しみを感じさせ、ともに涙を流させて下さい。
7つの悲しみの道行きの、結びの祈り
★殉教者の元后である聖母マリアよ…御子の苦難と、あなたの悲しみを思い、絶えずあなたの流された涙を私に思い出させて下さい。キリストよ、あなたは尊い十字架をもって世をあがなってくださいました。
✞私はあなたを礼拝し、あなたを賛美いたします。
★悲しみを極められた聖母よ、私の為にお祈り下さい。
✞私が、キリストの約束に相応しいものとなりますように。
★聖母よ…私の臨終の時の、憐れみをもって、私の傍にいて下さい。悪魔を追い払い、私の霊魂を御子の元に導き、審判の時、永遠の火から免れさせて下さいますように、心からお願いいたします。
✞アーメン